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Vol.1「ASVは運転をアシストする便利な機能」【清水和夫のASV/ADASマメ知識】

Vol.1「ASVは運転をアシストする便利な機能」【清水和夫のASV/ADASマメ知識】

自動車と50年以上も付き合ってきた清水和夫のコラム

最新のクルマは高度な技術が実用化され、運転を支援する安全機能も多様化しています。しかし、運転を支援する機能には限界もつきまといます。どこまで支援してもらえるのか? ユーザーは正しく理解する必要がありますが、その内容は難しいところもあります。そこで、マイカーに搭載される安全機能の正しい使い方をマスターするための、マメ知識をコラムでレポートいたします。

より安全なクルマを求めて

高度な運転支援は一般的にASV(Advanced Safety Vehicle=先進安全自動車)と呼び、これは国土交通省が実施する取り組みです。ASV第一期の推進計画は1991年から1995年まで開催されたので、歴史は古いですね。当時の背景としては、クルマにコンピューターや各種センサーが実用化されるようになり、運転を支援できる基盤技術が整ったのです。ときを同じくして、道路や通信環境を整備することで、高度な交通システムITS(Intelligent Transport Systems)も話題となり、世界の自動車先進国で整備され始めていました。クルマの性能はASVによって高度化され、ITSによってリアルタイムな渋滞道路状況もドライバーに提供されるようになりました。ASVとITSで事故と渋滞のない交通システムを実現するという大きな目標が掲げられました。

出展:「ASV(先進安全自動車) | 自動車総合安全情報 – ASV推進計画とは(https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/index.html#plan)」

ところで、日本ではASVという名称が使われていますが、米国ではすでにESV(実験的先進安全技術)という取り組みが計画されていました。グローバルに事業を進める日本メーカーは、安全なクルマを目指す目的で、ASVやESVに積極的に参画するようになりました。ASVの呼び方ですが、ユーザーが手にする新車カタログなどでは、ADAS(Advanced Driver Assistance System)という言葉も使われており、これはASVと同じように先進的な安全支援を意味しています。本コラムではASVを使って話を進めたいと思います。

参考

ASVは運転支援なので自動運転ではない

最近は自動運転の話題で盛り上がっていますが、自動運転といっても色々なユースケースがあります。そこでどんな走行条件で走るのか、しっかりと定義することが必要となってきました。現在、自動車の自動化を6つのカテゴリーで区分します。

  • 自動化しないシステムをレベル0。
  • 前後の加速・減速(ACC=アクセル・ブレーキ)が自動化するとレベル1。
  • 横方向(LKAS=ハンドル操作で車線を維持)が自動化するとレベル2。

と定義しています。

このレベル0~2まではドライバーに安全運転の義務がありますが、高度なASVのシステムでは手を離しで走ることも可能となりました。しかし、ドライバーは前方をしっかりと視認し、安全運転の義務があるので、ここまでは自動運転ではないのです。走る機能が部分的に自動化しても、自動運転とはならないのです。ここが少しわかりにくいですね。システムがドライバーに代わって安全確認するシステムから自動運転といえるので、ASVで扱う自動化システムは、あくでも運転支援なのです。

日本では世界に先駆けてレベル3を実用化し、法律も整備されています。しかし、自動運転の条件からそれると、ドライバーに運転を移譲します。つまりシステムとドライバーが交代するわけです。しかし、レベル4では自動運転の条件からそれても、システムが最後まで(安全停止)、システムで完結しなければなりませ。今のところ、乗用車はレベル3までを視野にしれて開発が進められていますが、現在はホンダのレジェンド(すでに生産中止)とドイツのメルセデス・ベンツSクラスのみが実用化しています。2025年ごろには他のメーカーもレベル3を実用化しそうです。

「Drive Safe」ではレベル2のASVを中心に情報提供していますが、レベル2ではドライバーに安全運転の責任があるので、自動車メーカーも開発しやすく、かなり多くのクルマにACCとLKASが採用されています。実際の事故や被害を軽減するにはむしろASVは非常に効果的です。次回はACCとLKASについて、詳しく説明したいと思います。

参考

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自動車と50年以上も付き合ってきた清水和夫のASVに関する連載コラム。Vol.1は「ASVとは?どんな機能か?」について。

清水和夫
Motor Journalist

Drive Safe!総監修、神奈川工科大学 特命客員教授 自動車工学担当。1972年のラリーデビュー以来、国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆活動を行うほか、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。